成果の数字を出せないときの導入事例制作|定性効果を伝える編集設計

導入事例を作ろうとすると、よく出てくる相談があります。「成果の数字を出せないのですが、事例になりますか」というものです。

成果の数字を出せないときの導入事例制作を示す手書き風の構成ボードイラスト

結論から言えば、数字が出せなくても導入事例は作れます。ただし、数字の代わりに何を読者の判断材料として置くのかを決めておかないと、記事は途端に弱くなります。「便利になりました」「助かっています」だけで終わってしまうと、検討中の読者が自社に置き換えにくいからです。

そもそも、BtoBの導入事例で数字を出せない理由はいくつもあります。顧客側のルールで公開できない。導入から日が浅く、まだ定量的な成果が出ていない。導入の目的が、売上やコストではなく社内の情報共有や判断のしやすさにある。どれも制作現場でよく起こることで、決して例外的な話ではありません。

ここで「数字がないから弱い」と決めつけると、本来使える事例を逃してしまいます。むしろ、数字がない事例ほど、何を成果として見せるのかを丁寧に考える必要があります。数字を無理に作るのではなく、読者が「自社でも同じ変化が起こりそうだ」と感じられる場面を描く。そこまで設計できれば、定性的な事例でも十分に納得感を作れます。

情報と感情、両方の順番で組み立てる

数字が出せない導入事例で先に決めたいのは、記事全体の組み立て方です。

導入事例の記事には、情報設計と感情設計の二つの側面があります。情報設計は、課題、比較、決め手、導入後の変化を分かりやすく並べる作業。感情設計は、読者が「自社にも近い話だ」と感じられる流れを作る作業です。数字が出せる事例であっても、出せない事例であっても、読者が納得する順番を作ることは変わりません。詳しくは、情報設計と感情設計|読まれる事例記事に必要な二つの視点でもまとめています。

数字が出せないときに、この二つを意識しておかないと、記事はどこかで失速します。たとえば、導入前の課題を説明した直後に成果だけを書くと、話が飛んで見えてしまう。間に、比較した選択肢、社内で迷った点、最後に決めた理由を入れると、読者は「だからその変化が起きたのか」と理解しやすくなります。


基本の流れは、課題、検討の背景、比較で迷った点、選定の決め手、導入後に変わった場面の5つです。この順番は、導入事例の作り方|書く前に決める5つのステップで詳しく扱っています。数字が出せないからといって、成果部分だけを無理に厚くする必要はありません。流れがつながっていれば、読者は十分に判断できます。

数字の代わりに、変化の場面を書く

組み立てが決まったら、次は中身です。数字を出せないときに見るべきなのは、導入前後で変わった場面です。

数字で示せる成果と場面で伝える成果の違いを示す図

毎回の確認作業が減った。営業が説明に迷わなくなった。社内で同じ資料を見ながら話せるようになった。上長への相談が進めやすくなった。こうした変化は、数字でなくても読者の判断材料になります。

一見すると小さく見える変化ですが、検討中の読者にとっては重要な情報です。読者が探しているのは「すごい成果が出た話」だけではありません。自社で導入したときに、誰の仕事がどう変わるのか、どの不安が減るのか。そこを知りたくて事例を読んでいます。

ただし、定性的な成果は抽象的に書くと一気に弱くなります。「業務がスムーズになった」ではなく、「担当者が毎回確認していた資料を探さなくなった」と書く。「社内共有がしやすくなった」ではなく、「営業会議で同じ事例を見ながら説明できるようになった」と書く。場面に落とすほど、読者は変化を想像しやすくなります。

取材では「何が減ったか」を聞く

場面を書くには、取材で具体的な話を引き出せている必要があります。引き出せていないものは、当然ながら書けません。

「どんな効果がありましたか」と聞くだけでは、相手も答えに困ります。返ってくる言葉も、どうしても「便利になりました」「助かっています」に寄りがちです。聞きたいのは、導入後に何が増えたかだけではありません。何が減ったのか、何に迷わなくなったのか、誰の動きが変わったのか。ここを切り分けて聞いていきます。

  • 導入前に、毎回どこで時間がかかっていましたか
  • 導入後、確認や相談が減った場面はありますか
  • 以前より判断しやすくなったことはありますか
  • 社内の説明で使いやすくなった材料はありますか
  • 担当者の心理的な負担が軽くなった場面はありますか

この聞き方に変えると、数字では表れにくい変化が見えてきます。導入事例では、ちょっとした会話の変化や、社内説明のしやすさが記事の説得力につながることも少なくありません。

書くときに避けたい表現

最後に、書き起こす段階で気をつけたい点です。

避けたいのは、ふわっとした褒め言葉だけでまとめてしまうことです。「大変好評です」「非常に役立っています」「業務改善につながりました」といった表現は便利な反面、それだけでは読者の記憶に残りません。

もう一つ避けたいのは、数字が出せないことをごまかす書き方です。定量的な成果が非公開であれば、その事情を無理に隠さなくてもよい場面があります。「定量的な数値は非公開ですが、現場では確認作業の手戻りが減っています」と書けば、読者も事情を理解できます。

成果を盛ることよりも、変化の輪郭をはっきりさせること。読者にとって必要なのは、派手な数字ではなく、自社で起こりそうな変化が具体的に見えることです。

数字がなくても、判断材料は作れる

数字を出せない導入事例でも、記事として弱くなるとは限りません。数字の代わりに、導入前後で変わった場面を具体的に書けば、読者の判断材料になります。

確認が減った、説明しやすくなった、判断が早くなった、不安が軽くなった。数字ではありませんが、検討中の読者にとっては十分に意味のある情報です。

数字を盛らず、事実を薄めず、読者が自社に置き換えられる場面として伝える。そこまで設計できると、数字が出せない導入事例も、営業やマーケティングの現場で使える記事になります。

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kageyama