導入事例の作り方 完全ガイド|制作手順・構成テンプレ・質問例・活用まで

本ページは「導入事例制作ガイド」として、企画から取材、執筆、公開後の活用(営業・マーケでの使い方)までを工程順に解説しています。内容が長いため、まずは目次から、いま必要な章(工程)を選んでお読みください。各章は工程ごとに読める構成のため、必要な箇所から参照いただけます。

0. 導入事例は「意思決定の再現」コンテンツ

導入事例は、成功談を「きれいにまとめる記事」ではありません。BtoBの導入判断で読者が欲しいのは、感想でも機能説明でもなく、自社と似た状況の企業が、どう考え、どう決め、導入後に何が変わったかという「意思決定の再現」です。

この前提があると、取材で聞くべきこと・原稿で書くべきことが自然に揃い、「良い話だった」で終わる事例になりにくくなります。

読者が導入事例で確認している4点

導入事例は、最低でも次の4点を揃えると「使える」コンテンツになります。読み手はこの順で情報を確認し、同じ判断を“自社に置き換えて”検討します。

  • 導入前の課題:何がどのレベルで詰まっていたか(具体)
  • 検討の背景:なぜ今、動く必要があったか(トリガー)
  • 決め手:比較の軸と、最後に背中を押した要因(判断軸)
  • 効果:導入後、何がどう変わったか(Before/After)

「成功談」と「意思決定の再現」の違い(例)

× 成功談:
「業務効率化のため導入した。便利になった。満足している」

○ 再現:
「月末締めで経理が3日止まり、残業が常態化。人を増やせず、固定化されたボトルネックを解消する必要があった。3社比較し、最終的に◯◯(決め手)で決定。導入後は締め処理が◯時間短縮し、問い合わせ件数も減少」

読み手は後者を見て初めて、「自社でも同じ順序で検討できる」と感じます。

取材と執筆を「再現」に寄せるための最小ルール

ここだけ守ると、導入事例の骨格が崩れません。

  • 課題:「困っていた」ではなく「何が限界だったか」まで
  • 決め手:「良かった」ではなく「比較の軸」で語る
  • 効果:「良くなった」ではなく「課題と1対1で対応づける」

この考え方を土台にして、以降では「取材前の準備」から「取材の進め方」「原稿の組み立て」「公開後の活用」までを、工程順に整理していきます。導入事例を“書いて終わり”にせず、営業・稟議・比較検討で使われる形に仕上げるための手順です。


1. 目的とターゲットを決める ~ここがズレるとすべてズレる

導入事例づくりで最初にやるべきことは、「何を書くか」ではなく「何のために作るか」を決めることです。目的とターゲットが曖昧なまま進めると、取材で聞くべきことが散り、原稿も「それっぽい成功談」に寄っていきます。
以降の工程(質問設計・構成・見出し・CTA)は、ここで決めた軸に沿って整えるだけです。

1-1. 導入事例の目的は、大きく4種類に分かれる

導入事例の目的は会社によって違いますが、実務上はだいたい次の4つに分類できます。

  • 比較検討を前に進める:検討企業の不安を下げる
  • 稟議・社内説明に使わせる:決裁者を動かす
  • 営業の商談勝率を上げる:最後のひと押し
  • 指名・信頼を増やす:ブランド・認知の蓄積

この分類をすると、「記事に入れるべき材料」が自動的に決まります。

  • ①比較検討:課題の具体性/検討プロセス/決め手
  • ②稟議・決裁:効果(できれば数字)/比較の軸/リスクの扱い
  • ③商談:導入の決定打/反対意見の乗り越え方/導入後の定着
  • ④指名・信頼:選ばれる理由の言語化(他社との違い)/独自性の伝え方

1-2. ターゲットは「担当者」ではなく「意思決定の役割」で切る

「ターゲット=担当者」だと情報設計が甘くなります。BtoBの導入判断は複数人が関わるため、「誰の判断を一番動かしたいか」を役割で切って考えます。

  • 現場担当(使う人):導入後の運用、負担、定着が気になる
  • 推進担当(情シス/企画/総務など):比較の観点、社内調整、導入プロセスが気になる
  • 決裁者(部長/役員):投資対効果、リスク、選定理由が気になる
  • 稟議関係者(経理/法務/セキュリティ等):要件、証跡、安心材料が気になる

同じ導入事例でも「誰に刺すか」で、見出しの重心(強調すべき材料)が変わります。

1-3. 目的×ターゲットが決まると、取材の質問が決まる

ここまで決めると、取材で迷いません。目的とターゲットに合わせて、「必ず取る情報」が固定されます。

例:「稟議を通したい(目的②)」「決裁者がターゲット」なら、最低限この4点を押さえます。

  • 比較検討の軸:何を評価したか
  • 決め手:最後に背中を押した判断材料
  • 効果:工数/コスト/売上/リスク低減(可能なら数字)
  • 導入リスクと回避策:社内懸念をどう潰したか

例:「比較検討を前に進めたい(目的①)」「現場担当がターゲット」なら、押さえるべきはこうです。

  • 導入前の詰まり:どこが限界だったか
  • 定着までの工夫:教育・運用・仕組み
  • 導入後の変化:体感・手間・やりやすさ

1-4. 目的が決まっていないときの決め方(実務で使える基準)

「全部欲しい」は現場あるあるですが、全部を狙うと全部弱くなります。迷ったら次の基準で決めます。

  • 問い合わせが増えない:①比較検討を前に進める
  • 問い合わせはあるが決まらない:②稟議・決裁を動かす
  • 商談で競合負けが多い:③商談勝率を上げる
  • 指名が弱い/認知が薄い:④信頼を増やす

この判断ができた時点で、導入事例は「作る」から「設計する」に変わります。


2. 事例にする企業を選ぶ ~「成果」より「読者の自分ごと化」

導入事例の品質は、取材やライティング以前に「誰の事例を選ぶか」でほぼ決まります。よくある失敗は、満足度が高い顧客や有名企業を優先してしまい、結果として「良い話だけど刺さらない事例」になることです。

強い導入事例の基準はシンプルです。読者が、こう思えること。

「それ、うちも同じ状況だ。なら、この判断プロセスは参考になる」

成果の大きさだけでなく、課題の具体性・検討のリアリティ・決め手の言語化が揃っている企業を選ぶ必要があります。

2-1. 採用すべき事例企業の条件(チェックリスト)

候補を出したら、以下の条件に当てはまるかを確認します。目安として、3つ以上当てはまると強い事例になりやすいです。

  • 導入前の課題が具体的:どの業務が、どの程度詰まっていたか
  • 検討プロセスが語れる:比較した/迷った/社内調整があった
  • 決め手が言語化できる:なぜ貴社だったのかが説明できる
  • 効果がBefore/Afterで語れる:数字 or 現場の変化が明確
  • 読者に近い属性:業界・規模・業務が似ている
  • 導入の障壁があった:反対意見・不安・リスクがあったが乗り越えた

2-2. 避けたほうがよい事例企業(やりがちな落とし穴)

次のタイプは、取材しても「再現性」が出にくく、原稿が薄くなりやすいです(ゼロではありませんが難度が上がります)。

  • 課題が抽象的:「効率化したかった」「DXしたかった」だけで具体が弱い
  • 比較検討がない:最初から決まっていて、迷いや判断軸がない
  • 効果が説明できない:数字も定性変化も語れず、「良かった」で終わる
  • 担当者が異動・退職している:意思決定の話が取れず、事実確認も難しい
  • 公開制約が厳しすぎる:社名・数字・画面・固有名詞が出せず、読者価値が落ちる

2-3. 「成果が小さくても強い事例」の条件

導入事例は、必ずしも「大幅なコスト削減」などの大成果が必要なわけではありません。むしろBtoBでは、成果が小さくても「判断に使える情報」が揃っている事例のほうが刺さります。

成果が小さくても強くなるのは、次のいずれかが取れるケースです。

  • 決め手が明確:比較軸と、最後の判断が言語化されている
  • 導入の障壁を越えた話がある:社内調整、反対意見、稟議の通し方など
  • 定着の工夫が具体的:教育・運用・ルール化など、真似できる
  • 変化が明確:数字でなくても、問い合わせ減、判断の高速化、属人化解消など

2-4. 候補企業をリストアップする手順(実務用)

候補の出し方は、感覚ではなく「見せたいメッセージ」→「そのメッセージが成立する顧客」の順にするとブレません。

  1. 主メッセージを1つ決める:例:現場定着が早い/稟議が通りやすい/運用負担が小さい 等
  2. メッセージに沿う顧客を5〜10社挙げる
  3. チェックリスト(2-1)で絞り込み、優先度順に3社にする

この時点で「誰に向けて、何を証明する事例なのか」が固まり、取材で回収すべき情報も決まります。

2-5. 事例の「バリエーション」を意識すると、サイト全体が強くなる

導入事例は1本だけ強くしても効果が限定的です。継続的に作る前提なら、次のようなバリエーションを意識すると、検索・営業・稟議のどこでも使いやすくなります。

  • 業界別:同業の安心材料
  • 規模別:中小・大企業の文脈差を埋める
  • 課題別:属人化/工数/ミス/セキュリティ 等
  • 意思決定別:稟議が重い/現場主導/情シス主導 等

3. 取材依頼で承諾を得る ~承諾率を上げる依頼文テンプレ付き

導入事例は「取材させてください」とお願いすれば通るものではありません。断られる理由の多くは、製品やサービスへの不満ではなく、「手間・不安・社内確認の面倒さ」です。
承諾率を上げるコツは、熱量で押すことではなく、最初の連絡で相手を「検討できる状態」にすることです。

そのために、最初の連絡では次の3点を短く・明確に提示します。

  • 目的:何のための取材か(読者にとっての価値)
  • 負担:所要時間/方法(オンライン・対面)/お願いすること
  • 安心:公開前の確認・公開範囲・NG項目の扱い

3-1. 依頼メールで必ず入れるべき5項目

メール(またはフォーム)で依頼する場合、本文は長くするほど読まれません。最低限、次の5項目を入れると承諾までの往復が減ります。

  • 依頼の目的:何のための導入事例か
  • 想定読者:どんな企業の参考になるか
  • 取材の所要時間・方法:オンライン/対面、60分など
  • 公開前の確認フロー:必ず確認いただく/修正反映
  • 公開範囲と配慮:社名・数値・画面・固有名詞の可否、NG対応

3-2. 件名テンプレ(そのまま使える)

件名は「導入事例」「取材」「所要時間」を入れると誤解が減ります。用途別に3パターン用意しておくと便利です。

短く要件型:
【導入事例の取材依頼】〇〇導入の取り組みについて(所要時間:90分)

メリット明示型:
【導入事例掲載のご相談】貴社の取り組みを事例としてご紹介させてください

確認前提型:
【公開前に必ずご確認いただきます】導入事例取材のお願い(〇月〇日候補)

3-3. 依頼メール本文テンプレ(短文・実務用)

まずは最短の依頼文です。長文で熱く書くほど、相手の心理的コストは上がります。

▼テンプレ(短文)

〇〇株式会社 〇〇様

いつもお世話になっております。〇〇株式会社の〇〇(氏名)です。

このたび、弊社サービス(製品)をご活用いただいているお客様の取り組みを、導入事例としてご紹介させていただけないかご相談です。
同様の課題を持つ企業様にとって参考になる内容として、貴社の取り組みをぜひ取り上げさせていただきたいと考えております。

取材:オンラインで90分程度(事前に質問項目を送付)
確認:記事は公開前に必ず貴社にご確認いただきます
公開範囲:社名・数値・固有名詞などはご相談のうえ調整(NG項目は掲載しません)

もしご検討いただけるようでしたら、以下いずれかでご都合いかがでしょうか。
・〇月〇日(〇)〇時〜
・〇月〇日(〇)〇時〜
・〇月〇日(〇)〇時〜

難しい場合は、別候補日でも問題ございません。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

署名

3-4. 依頼メール本文テンプレ(丁寧版・社内確認が重い企業向け)

公共系・大企業・規約が厳しい企業などは、先に「安心材料」を厚めに置くほうが通りやすいです。

▼テンプレ(丁寧版)

〇〇株式会社 〇〇様

平素より大変お世話になっております。〇〇株式会社の〇〇(氏名)です。

このたび、弊社サービス(製品)の活用事例として、貴社の取り組みを導入事例記事にてご紹介させていただけないか、ご相談申し上げます。
読者は、同様の課題を抱える企業のご担当者・決裁者であり、貴社の取り組みは検討企業にとって参考になると考えております。

取材:オンラインまたは対面で60〜90分程度(事前に質問項目を共有)
確認:原稿は公開前に必ず貴社にご確認いただきます
公開範囲:社名・部署名・数値・画面・固有名詞等は貴社のご意向に沿って調整(NG項目は掲載しません)

可能であれば、公開時期(〇月頃)も含め、事前にすり合わせさせてください。

取材候補日として下記いずれかでご都合いかがでしょうか。
・〇月〇日(〇)〇時〜
・〇月〇日(〇)〇時〜
・〇月〇日(〇)〇時〜

まずは可否だけでもご返信いただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

署名

3-5. 断られやすい理由トップ5と切り返し(実務用)

「導入事例は無理です」と言われても、理由は1つではありません。理由別に切り返すと通るケースが増えます。

理由①:忙しくて時間がない
→ 切り返し:所要時間を短縮し、事前質問+確認中心にする。
例:「30分でも可能です。事前に質問をお送りし、当日は要点確認だけにします」

理由②:社内確認が大変
→ 切り返し:公開前確認を前提に、確認範囲を明確化する。
例:「公開前に必ずご確認いただき、社名・数値・固有名詞は貴社基準で調整します。確認の手間が増えないよう、確認ポイントをこちらで整理してお送りします」

理由③:数値が出せない
→ 切り返し:定性効果でも成立することを先に合意する。
例:「数値が難しい場合でも、業務の変化(問い合わせ減、判断が早くなった等)を中心に構成できます。公開できる範囲で問題ありません」

理由④:社名やサービス名を出したくない
→ 切り返し:匿名・伏せ字・業界表現での掲載を提案する。
例:「業界・規模感のみでの掲載や、固有名詞を伏せた形でも可能です」

理由⑤:内容がまだ途中で、語れる状態ではない
→ 切り返し:“導入プロセス中心”に切り替える。
例:「効果が出揃っていなくても、検討の背景・導入の決め手・社内調整の工夫は十分に価値になります」

3-6. 承諾後に必ず送る「次の一通」(取材がスムーズになる)

承諾を得たら、すぐに次のメールで「質問」「当日の流れ」「確認スケジュール」を渡すと、当日の回答品質が上がります。

  • 当日のアジェンダ:例:5分 目的/75分 質問/10分 補足・写真
  • 質問項目:事前共有
  • 制作スケジュール:初稿予定日/確認期限/公開予定
  • 写真撮影の可否:顔出し・撮影場所・服装の指定が必要か

4. 取材設計 ~何を聞くか(質問設計・深掘り・回収ポイント)

※この章では「何を聞くか(取材設計)」を整理します。次章では「当日の回し方(取材運用)」を扱います。

導入事例の取材は、雑談をうまく回す場ではありません。目的はシンプルで、「意思決定の再現」に必要な材料を取り切ることです。そのためには、当日の場数よりも、事前の設計当日の質問の順序が効きます。

ここでは「取材前の準備」→「当日の進行」→「深掘りのコツ」までを、実務でそのまま回せる形にまとめます。

4-1. 取材前に固める4点(ここが曖昧だと当日ブレる)

取材前に、最低限次の4点を固めます。これが揃うと、当日の質問が散らかりません。

  • 目的×ターゲット:誰を動かすための事例か
  • 主メッセージ:今回の事例で何を証明したいか(1つ)
  • 骨格(4点セット):課題/背景/決め手/効果
  • 公開条件:社名・数値・固有名詞・画面などの可否

※この段階で「効果は数字必須」などの縛りがある場合は、取材前に合意しておくと、当日が軽くなります。

4-2. 事前にもらっておくと取材が速くなる情報

取材時間を伸ばさずに内容を濃くするには、事前に“事実”を回収しておくのが一番効きます。可能なら次を先にもらいます。

  • 導入製品・範囲:どこに何を入れたか(対象部署・業務)
  • 導入時期:検討開始〜導入〜定着までの大まかな時系列
  • 体制:関与した役割(推進/現場/決裁/稟議)
  • 効果の一次情報:数字があるなら項目だけ(工数・コスト・件数など)

こうした“事実”を事前に押さえておくと、当日は判断の理由迷いに時間を使えます。

4-3. 当日の進行テンプレ(この順で聞けば、材料が揃う)

取材の基本は、「課題」から入って「決め手」で締めるのではなく、課題 → 背景 → 比較 → 決め手 → 導入 → 効果 → 今後の順で、意思決定の流れをそのまま辿ることです。

▼進行テンプレ(60〜90分想定)

  1. 導入前の課題(10〜15分):どこが限界だったか(詰まり)
  2. 検討の背景(5〜10分):なぜ今動いたか(トリガー)
  3. 比較検討(10〜15分):候補/比較軸/迷い
  4. 決め手(10分):最後に決まった判断材料(背中を押した要因)
  5. 導入プロセス(10分):社内調整/反対意見/導入の工夫
  6. 効果(10〜15分):Before/After(課題と1対1で対応づけ)
  7. 今後(5分):次にやりたいこと/他社への示唆

この順にすると、話が「良かった」で散らばらず、自然に「再現」になります。

4-4. 深掘りのコツ(薄くなりやすい3点だけ押さえる)

導入事例が薄くなる原因は、だいたい次の3点が浅いからです。ここだけ深掘りすれば、記事の密度が上がります。

  • 課題:「困っていた」ではなく「何が限界だったか」まで
  • 比較軸:「良かった」ではなく「何を評価したか」まで
  • 効果:「良くなった」ではなく「何がどう変わったか」まで

深掘りは難しくありません。次の“型”で聞くだけで、具体が出ます。

▼深掘りの型(そのまま使える)

  • 具体化:「それは具体的にどの業務ですか?」「頻度は?件数は?」
  • 比較化:「他社と比べたとき、どこが違いましたか?」
  • 因果化:「なぜそれが決め手になったんですか?」「何が不安だった?」
  • Before/After化:「導入前はどう回っていて、今はどう変わりましたか?」

4-5. 「決め手」を取り切るための質問(ここが抜けると再現にならない)

決め手は、導入事例の価値を決めるパートです。「最後に何で決めたか」が言語化できないと、読者は検討を再現できません。

決め手は、次の2段構えで聞くと取れます。

  • 比較の軸:最初に何を評価したか(候補が並ぶ理由)
  • 最後の一押し:最終的に何が背中を押したか(決まる理由)

▼決め手を取る質問例

  • 比較軸:「比較するとき、何を基準にしましたか?」
  • 迷い:「最後まで迷った点は何でしたか?」
  • 決定打:「最終的に“これでいける”と思えた理由は?」
  • 反対意見:「社内で懸念は出ましたか?どう解消しましたか?」

4-6. 効果をBefore/Afterで固定する(盛らずに強くする)

効果は“盛る”必要はありません。重要なのは、導入前の課題と1対1で対応づけて、変化を固定することです。

▼効果の整理テンプレ(取材中に使える)

  • 課題:(例)月末に経理が止まる
  • Before:(例)締め処理に3日/残業が常態化
  • After:(例)締め処理が半日/残業が減少
  • 補足:数字が出せない場合は「何が楽になったか」「ミスが減ったか」など定性で固定

数字が出せない場合でも、変化が具体なら十分に成立します(問い合わせ減・判断の高速化・属人化解消など)。

4-7. 取材後にやるべき2つ(当日で終わらせない)

取材が終わった直後に、次の2つだけやっておくと後工程が詰まりません。

  • 事実確認の要点を整理:社名・部署名・数字・固有名詞など、確認が必要な箇所を先にリスト化
  • 初稿スケジュールを共有:初稿提出日/確認期限/公開予定日

ここまでをテンプレ化すると、導入事例の制作は「属人的な腕」ではなく、再現できる工程になります。

5. 取材運用 ~どう回すか(当日の進行・言葉の引き出し)

※この章は「取材当日の運用」に絞ります。質問設計(何を聞くか)は前章を参照してください。

取材当日は「会話が盛り上がったか」ではなく、記事として必要な材料が揃ったかで成否が決まります。導入事例で落としやすいのは、最後に一番重要な「決め手」「効果」が薄くなることです。

ここではテンプレ質問そのものではなく、取材中にしかできない回収技術(深掘り/引き出し/数字が出ないときの取り方/社内確認を前提にした言い回し)に絞って整理します。

5-1. 取材の最初5分で「公開前提」を揃える(後の修正が減る)

取材開始直後に、次の3点だけを短く確認します。ここが曖昧だと、原稿の確認段階で止まりやすくなります。

  • 公開範囲:社名/部署名/数値/画面/固有名詞の可否
  • 確認フロー:確認者は誰か/確認に必要な日数
  • 素材:人物写真・オフィス写真・ロゴ・画面キャプチャの可否

5-2. 「課題」を薄くしない深掘りの型(困っていた→限界だった)

課題が「効率化したかった」で止まると読者価値が出ません。必ず“限界”まで具体化します。使う型はこれだけで十分です。

  • どこが詰まっていたか:業務のどの工程/誰が/いつ
  • どの程度だったか:時間・頻度・件数・人数・ミス
  • 何が限界だったか:遅延/残業/属人化/品質低下/機会損失

▼質問例(そのまま使える)

  • 「一番大変だったのは、業務のどの部分でしたか?」
  • 「それは、月にどれくらい発生していましたか?(時間・件数など)」
  • 「このままだとまずい、と判断した“限界”は何でしたか?」

5-3. 「決め手」を引き出す型(良かった→比較の軸→最後の判断)

決め手が「使いやすかった」「サポートが良い」だけだと弱いです。読者が欲しいのは比較の軸最終判断です。以下の順で聞くと外しません。

  • 比較の軸:何を評価したか(機能、価格、運用負担、セキュリティ等)
  • 迷った点:どこで迷い、何が不安だったか
  • 最後の判断:最終的に何が背中を押したか(決め手)

▼質問例(そのまま使える)

  • 「比較するとき、特に重視した判断軸は何でしたか?」
  • 「最後まで迷った点はどこでしたか?」
  • 「最終的に“これなら行ける”と決めたポイントは何でしたか?」

▼決め手が出ない時の切り返し(必須)

  • 「逆に、他社だと難しいと思った点はありましたか?」
  • 「もし◯◯(この要素)がなかったら、選びましたか?」
  • 「社内で最後に合意を取れた“言葉”は何でしたか?」

5-4. 「効果」を回収する型(良くなった→Before/Afterの対応づけ)

効果は「導入後の良い話」ではなく、課題と1対1で対応づけると強くなります。取る順番はこうです。

  • Before:導入前に起きていたこと(課題の具体)
  • After:導入後に変わったこと(数字→定性)
  • 因果:なぜ変わったか(運用の変化・定着の工夫)

▼質問例(そのまま使える)

  • 「導入前は具体的に何に時間が取られていましたか?」
  • 「導入後、その部分はどれくらい変わりましたか?(可能なら数値で)」
  • 「変化が出た要因は、運用のどこを変えたからだと思いますか?」

▼数字が出ない時の“代替の取り方”

  • 時間の代替:「月末の締めが“何日→何日”になった」
  • 件数の代替:「問い合わせ・差し戻しが“体感で半分以下”」
  • 判断の代替:「判断に必要な情報が揃い、確認の往復が減った」
  • リスクの代替:「属人化が解消し、引き継ぎが可能になった」

※数値が難しい場合でも成立するように、「何が」「どれくらい」「どう楽になったか」を最低限セットで回収します。

5-5. 導入プロセスは「時系列+障壁+対処」で取る(再現性の核)

プロセスは単なる時系列ではなく、障壁対処が入ると読者が真似できます。

  • 時系列:検討開始→選定→導入→定着(期間も)
  • 障壁:反対意見/不安/社内調整で詰まった点
  • 対処:どう合意を取ったか/何を先に整えたか

▼質問例(そのまま使える)

  • 「検討開始から運用が安定するまで、どれくらいかかりましたか?」
  • 「一番詰まったのはどの局面でしたか?」
  • 「その時、どうやって前に進めましたか?」

5-6. 「言い切り」を避けるための安全な言い回し(社内確認が通りやすい)

導入事例は、原稿確認で止まりやすい表現があります。取材中から、次の言い回しに寄せると後が楽です。

  • ×「絶対に」「必ず」「完全に」 → ○「〜という実感がある」「〜できるようになった」
  • ×「業界初」「日本一」 → ○「当社内では初めて」「当社としては大きな変化」
  • ×「◯◯社より優れている」 → ○「比較した観点では〜が合っていた」

5-7. 取材の最後に必ずやるチェック(取り漏れ防止)

終了3分前に、次のチェックだけは必ず入れます。ここで穴が見つかることが多いです。

  • 決め手:比較の軸と最終判断が1文で言える
  • 効果:Before/Afterが課題と対応しているか
  • 確認事項:公開範囲/確認者/確認期限が揃っているか

6. 文章を書く ~読みやすく、営業で使える導入事例に仕上げる

取材が終わっても、導入事例はまだ半分です。ここからの「書き方」で、同じ素材でも成果が変わります。
導入事例の文章で重要なのは、言い回しの上手さではなく、読者が意思決定を再現できる順序で、必要な材料が揃っていることです。

この章では「文章形式の一覧」を並べるのではなく、目的×ターゲット→形式→見出しテンプレの順に落とします。
(「文体」と「文章形式」を混同すると読みづらくなりやすいので、先に整理したい場合は別記事を参照してください)

6-1. まず決めるのは「文章形式」ではなく“ゴール”

ゴールが曖昧だと、途中で「いい話」や「紹介文」に寄っていきます。最初に、次のどれをゴールにするかを決めます。

  • 意思決定を後押しする:検討中の企業が「自社でも導入できそう」と判断できる
  • 営業資料として使える:商談で、決め手と効果が短時間で伝わる
  • 運用の再現性を伝える:導入プロセス・社内調整が参考になる

ゴールが決まると、「どの文章形式が適しているか」は自然に決まります。

6-2. ゴールに合わせた文章形式の選び方(3パターン)

導入事例で実務的に使う文章形式は、ほぼ次の3つに集約できます。迷うなら基本は(1)地の文+コメントです(SEO・営業活用・読了率のバランスが最も良い)。

(1)地の文+コメント(標準。最も強い)

  • 向いている:検討企業の意思決定を後押ししたい/記事としても営業資料としても使いたい
  • 注意点:地の文が“製品紹介”に寄ると広告臭が出る(課題→決め手→効果に戻す)

(2)一人称ストーリー(共感を取る)

  • 向いている:現場の葛藤・社内調整・導入の過程に価値がある/心理的ハードルを下げたい
  • 注意点:ストーリー優先で「決め手」「効果」が薄くなりがち(後述のチェック必須)

(3)Q&A(確認が厳しい企業で強い)

  • 向いている:表現規制が強い/発言の正確さが必要/確認者が多い
  • 注意点:質問が散ると読みにくい(質問は見出しと同じ粒度にする)

※Q&Aは読み手が全体像を掴みにくいので、冒頭に要約(サマリー)を置くと崩れにくくなります。

6-3. 見出しテンプレ(この順番で書けば「導入判断」が再現できる)

文章の品質は、見出しで決まります。導入事例の基本テンプレは次です(最も使われ、崩れにくい型)。

▼見出しテンプレ

  • タイトル:成果(数字)+対象(誰が)+手段(何で)
  • リード:課題→導入→効果の要約(3〜4行)
  • 企業紹介:前提条件(業種・規模・体制)
  • 導入前の課題:限界まで具体化(時間・頻度・件数)
  • 検討背景・決め手:比較軸→迷い→最終判断
  • 導入プロセス:時系列+障壁+対処
  • 導入後の効果:Before/After対応(定量→定性)
  • 今後の展望:次の一手(拡張・改善)
  • 検討企業へのメッセージ(任意):経験者としての一言

※「検討企業へのメッセージ」は必須ではありませんが、入ると読後感が良くなります。

6-4. タイトルの作り方(SEOと商談で効く)

タイトルは“装飾”ではなく、導入事例の中身を約束する要素です。最も強いのは次の構造です。

成果(数字)+対象(誰が)+手段(何で)

▼例

  • 「問い合わせ対応時間を月40時間削減。◯◯社が◯◯で実現した業務改善」
  • 「属人化していた◯◯業務を標準化。◯◯社が◯◯導入で得た運用の成果」

▼数字が出ない場合の代替

  • 期間差:「締め処理が3日→1日に」
  • 判断コスト:「確認の往復を削減」
  • リスク:「引き継ぎ可能に(属人化解消)」

6-5. リード文の作り方(4行で“読む理由”を作る)

リードは長くすると読まれません。導入事例のリードは、次の順で3〜4行が基本です。

▼リードの型(3〜4行)

  1. 導入前の課題:何が限界だったか
  2. 導入したもの:何を導入したか
  3. 効果:何がどう変わったか
  4. 読みどころ:決め手・プロセスなど

▼例(型)
◯◯業務が属人化し、月末処理の遅延が常態化していた◯◯社。
同社は◯◯を導入し、業務フローの標準化と情報共有を進めた。
結果として、月末の締め処理を3日から1日に短縮し、問い合わせ対応の負荷も軽減。
本記事では、比較検討の判断軸と導入定着までのプロセスを紹介する。

6-6. 本文は「課題→決め手→効果」を対応づける(散らからない)

本文が散る原因は、課題・決め手・効果がバラバラに語られることです。導入事例は、次の対応づけで書くと強くなります。

  • 課題:何が詰まっていたか(具体)
  • 決め手:その課題を解く上で、何を評価したか(比較軸)
  • 効果:その課題が、導入後にどう変わったか(Before/After)

最終的に、読者が「自社に置き換えるとこうだ」と判断できれば成功です。

6-7. 確認で止まりにくい文章にする(言い切りを避ける)

導入事例は確認工程で止まりやすい表現があります。次のルールで統一するとスムーズです。

  • ×「必ず」「完全に」 → ○「〜できるようになった」「〜という実感がある」
  • ×「業界初」「日本一」 → ○「当社内では初めて」「当社としては大きな変化」
  • ×「他社より優れる」 → ○「比較した観点では〜が合っていた」

6-8. 公開前チェック(この3つが揃っていれば「使える事例」)

書き終えたら、最後にこの3点だけを確認します。ここが揃っていれば、読み手にとっても営業にとっても“使える”導入事例になります。

  • 決め手:比較軸と最終判断が1文で言える
  • 効果:課題とBefore/Afterが対応しているか
  • 再現性:導入プロセスに「障壁+対処」が入っているか

7. デザイン・レイアウト(Webページ)を作成する ~「読める事例」を「使える事例」に

導入事例は、文章だけで完成しません。Webで読まれる導入事例は、「理解しやすい構造」「拾いやすい見せ方」で成果が決まります。
同じ原稿でも、見出し設計・強調・図版・CTAの置き方で、読了率も問い合わせ率も変わります。

この章ではデザインの美しさではなく、導入判断の材料を“取り出しやすく”するレイアウト設計に絞って整理します。

※「効果的な導入事例=理解しやすい構成とデザイン」の観点は、別記事も参照できます。

7-1. 先に決めるのは「見せ方」ではなく「読者の導線」

導入事例の読者は、最初から最後まで読まないことが多いです。多くの読者は、次の順番で“必要な箇所だけ”を探します。

  • 最初に見る:成果(効果)/課題の一致/自社に近い条件
  • 次に見る:決め手(比較軸)/導入の難しさ(プロセス)
  • 最後に見る:具体的な運用/次の展望/問い合わせ導線

つまりレイアウトは、上から順に飾るのではなく、読者が探す順に“拾える形”で配置するのが基本です。

7-2. まず置くべきは「要約ボックス」(冒頭で離脱を防ぐ)

最も費用対効果が高いのが、記事冒頭の要約(サマリー)ボックスです。ここがあるだけで、読者は「読む価値」を判断できます。

要約ボックスに入れる項目(固定)

  • 導入前の課題:何が限界だったか(1行)
  • 決め手:比較の軸と最終判断(1行)
  • 効果:Before/After(可能なら数値)(1行)
  • 導入期間:検討〜定着まで(短く)

▼例(そのまま使える見せ方)
課題:月末処理が属人化し、締めが遅延していた
決め手:運用負担と定着支援の観点で比較し、◯◯が合致
効果:締め処理が3日→1日に短縮、差し戻しが大幅に減少
導入期間:検討1か月/導入2か月/定着まで3か月

7-3. 見出し内の「強調ルール」を決める(読む負担を下げる)

導入事例が読まれない理由の多くは、内容ではなく目が滑ることです。強調のルールを先に固定すると、読みやすさが安定します。

  • 強調するのは3種類だけ:数字/固有名詞(許諾範囲内)/比較軸(決め手)
  • 1段落に強調は最大1〜2箇所:強調だらけにしない
  • 長文は分解:1段落は3〜5行で切る

このルールだけで、同じ文章でも体感の読みやすさが大きく変わります。

7-4. 図版・インフォグラフィックの入れどころ(3パターン)

図版は「入れたほうが良さそう」で作ると、コストだけ増えます。導入事例で効果が出やすい図版は、ほぼ次の3つです。

(1)Before/After比較(効果の視認性を上げる)

  • 目的:効果を一瞬で理解させる
  • 向いている:工数、日数、件数、ミス、問い合わせ、コスト
  • 形式:表/棒グラフ/2カラム比較

(2)導入プロセスの時系列(再現性を作る)

  • 目的:導入の進め方が真似できる状態にする
  • 向いている:社内調整が重い案件、段階導入、複数部門
  • 形式:タイムライン(検討→選定→導入→定着)

(3)運用フロー(「なぜ効いたか」を理解させる)

  • 目的:効果の因果(運用の変化)を説明する
  • 向いている:業務プロセス改善、SaaS導入、ワークフロー
  • 形式:簡易フロー(5〜7要素以内)

図版は多く作るより、「効果」「プロセス」「運用」のどれか一つを確実に強化する方が成果に直結します。

7-5. 画像(人物写真)のルール(信頼性を落とさない)

人物写真は信頼性に効きますが、扱いを誤ると逆効果です。最低限、次を揃えます。

  • 写真は用途を決める:トップ(顔)/本文(現場)/素材(会議室・機器など)
  • キャプションを付ける:誰のコメントかを明確にする
  • 許諾範囲を明示:Web掲載可/二次利用可否(社内共有含む)

「写真がある=良い」ではなく、コメントと写真が対応している状態が重要です。

7-6. 関連リンクの貼り方(SEOと回遊を両立する)

関連リンクは、闇雲に貼ると読みにくくなります。原則は“読者が次に困る所にだけ貼る”です。

  • 構成・質問で迷う読者:質問案・進め方の記事へ
  • 品質基準が知りたい読者:良い事例の条件の記事へ
  • 文章の組み立てで迷う読者:文体・形式の整理へ

※リンクは「関連記事」欄だけでなく、該当箇所の直後に置くと回遊しやすくなります(疑問が発生するタイミングに合わせる)。

7-7. CTA(問い合わせ導線)の設計(“押し売り”にしない)

導入事例は営業コンテンツですが、CTAを強くしすぎると信頼性が下がります。ポイントは、読者の状態に合わせてCTAを分けることです。

  • 記事の中盤(決め手〜効果の前後):資料・テンプレの取得(軽い行動)
  • 記事末尾:問い合わせ(重い行動)

▼CTA文の型(押し売りにならない)

  • 「導入事例を量産するための仕組み(テンプレ・質問案)をまとめました」
  • 「取材〜編集まで、社内負担を増やさずに進めたい場合はご相談ください」

読者は「買う」より先に「作る」で困っています。だからCTAは、“作れる状態にする支援”から入る方が自然です。

7-8. 公開前のレイアウト最終チェック(見た目ではなく機能)

最後に、デザインの好みではなく、導入事例としての機能が満たされているかを確認します。

  • 冒頭で理解できる:課題・決め手・効果が要約で拾える
  • 探しやすい:見出しだけ追っても全体が分かる
  • 強調が効いている:数字・決め手が視認できる
  • CTAが自然:中盤は軽い行動、末尾は問い合わせ

8. お客様に確認する ~修正を増やさず、承認を取り切る

導入事例で一番ストレスが大きい工程が「確認」です。ここでつまずくと、差し戻しが増え、関係者が増え、原稿が薄まり、公開が遅れます。

コツはシンプルで、「何を確認してほしいか」を先に固定し、「修正の集約ルール」を決め、「承認(公開OK)の定義」を明確にすることです。

8-1. 確認の「対象」は3つだけに絞る

お客様確認で何でもかんでも見てもらうと終わりません。確認対象は次の3つに絞ります。

  • 事実確認:固有名詞/数字/時系列/機能説明/導入期間
  • 表現の可否:公開してよい言い回しか(NGワード、比較表現、断定など)
  • 公開範囲:社名・部署名・画面・写真・ロゴ・数値の掲載可否

逆に、語尾の好みなど「文章の趣味」まで拾うと修正が増えます。依頼の冒頭で「確認してほしいポイント」を明確に伝え、議論の範囲を固定します。

8-2. 「確認用パッケージ」で出す(Word単体で渡さない)

Word原稿だけ渡すと、確認者の解釈がバラつきます。おすすめは、確認に必要な情報をセットにして渡すことです。

  • 確認用URL:可能ならWebプレビュー(見出し・図版・写真が一目で分かる)
  • 確認ポイント:事実/表現/公開範囲(箇条書き)
  • 修正の出し方:コメント or 返信メールなど(1つに統一
  • 期限:いつまでに/遅れた場合の扱い

8-3. 修正を増やさない「集約ルール」を先に決める

差し戻しが地獄化する原因は、修正が複数経路から来ることです。確認依頼の段階で、次を必ず決めます。

  • 修正窓口を1人にする:社内で指摘を集約してもらう(最重要)
  • 修正方法を1つに統一:コメント/返信メールなど
  • 修正回数を定義:原則1回(必要なら2回まで)

これを伝えないと、担当者・上長・広報・法務などから別々に指摘が来て、収拾がつかなくなります。

8-4. 承認(公開OK)の定義を明確にする

確認のゴールは「修正がなくなる」ではなく、公開OKを取ることです。ここが曖昧だと、ずっと“検討中”になります。

  • 公開OKの定義:本文・画像(図版/写真)・会社名・公開範囲が承認された状態
  • 最終承認者:誰のOKが出れば公開できるか
  • 公開日:目安でよいので共有(いつ公開予定か)

「問題なければOK」方式は危険です。できれば「公開OKです」の一文をもらう設計にします。

8-5. 確認依頼メールの型(そのままコピペで使える)

件名:導入事例 原稿ご確認のお願い(◯月◯日まで)

◯◯株式会社 ◯◯様
いつもお世話になっております。◯◯株式会社の◯◯(氏名)です。
先日は取材のお時間をいただき、誠にありがとうございました。

導入事例の原稿(プレビュー)をご用意しましたので、ご確認をお願いいたします。
【確認用URL】:◯◯(URL)

【ご確認いただきたいポイント】
1)事実関係:固有名詞・数字・時系列・機能説明・導入期間
2)表現の可否:公開に適した表現か(NG項目がないか)
3)公開範囲:社名/部署名/画像・画面・写真/数値の掲載可否

【修正のご連絡方法】
恐れ入りますが、修正は(コメント/メール返信)にて、可能な範囲で◯◯様にて集約の上、ご連絡ください。

【ご返信期限】◯月◯日(◯)まで
期限までに本メールへ「公開OKです」のご返信をいただけましたら、公開準備に進めます。

何卒よろしくお願いいたします。
(署名)

8-6. 指摘は「全部直さない」ための優先順位を持つ

確認で来る指摘は、全部同じ重さではありません。優先順位を決めて処理します。

  • 最優先:事実誤認(数字/固有名詞/時系列)→必ず修正
  • 優先:公開リスク(比較表現/断定/機密)→表現を調整
  • 調整:ニュアンス(言い回し/語尾)→全体の強度が落ちるなら戻す

特に注意したいのは、ニュアンス修正で「決め手」「効果」が薄くなるパターンです。その場合は、表現を柔らかくしつつ、比較軸・Before/Afterが残る形に落とします。

8-7. 修正管理は「方式を1つに統一」して分岐を防ぐ

修正を回すときは、どこが変わったか分からなくなるのが一番危険です。運用は次のどれかに統一します。

  • Word:変更履歴(トラック変更)+コメント
  • Google Docs:提案モード+コメント
  • WordPress:下書きURLで確認+修正点はメールで箇条書き

どの方式でも、最終的に「公開版(確定)」を1つに固定し、バージョンが分岐しないようにします。

8-8. 最終承認を取り切る「返信の型」を用意する

最後は、相手の負担を増やさずに承認を取り切るため、返信の型を用意します。

ご確認ありがとうございました。
修正を反映しましたので、差し支えなければ本メールへのご返信にて「公開OKです」とお送りください。
いただき次第、公開準備に進めます。

9. 導入事例を公開・活用する ~公開して終わらせない。成果につなげる

導入事例は「公開」がゴールではありません。本当のゴールは、導入事例が商談・問い合わせ・指名検索に効き、社内でも使い回される状態になることです。

この章では、公開直後の配置最適化二次利用(営業・メール・SNS)計測と改善まで、実務で回せる形に絞って整理します。

9-1. 公開直後にやるべき「3つの配置」(最優先)

導入事例は、内容だけでなく「どこに置くか」で成果が変わります。公開したら、最低限この3カ所に配置します。

  • 製品・サービスページ:検討中の読者が最も集まる場所(最重要)
  • 導入事例一覧ページ:カテゴリ・業種・課題別に探せる導線
  • トップ/お知らせ:短期的に露出を作る(期間限定でもOK)

「導入事例は作ったが成果が出ない」原因の多くは、製品ページに紐づいていないことです。

9-2. CTAは「1種類」ではなく読者段階で分ける

導入事例の読者は、同じ温度感ではありません。CTAを一つにすると取りこぼしが出ます。おすすめは二段構えです。

  • 軽いCTA(中盤):資料DL/テンプレDL/関連ナレッジ(行動のハードルが低い)
  • 重いCTA(末尾):問い合わせ/デモ依頼/相談(意思決定が進んだ人向け)

導入事例は「買う」より先に「検討する」記事なので、まずは軽い行動を用意するほうが自然です。

9-3. 営業資料化(最短で効く二次利用)

二次利用で最も即効性があるのが、営業資料(1〜2枚)への転用です。ポイントは「全部入れる」ではなく、商談で必要な判断材料だけに絞ることです。

営業スライドの最小構成(1枚でも成立)

  • 課題:導入前の限界(1行)
  • 決め手:比較軸と最終判断(1行)
  • 効果:Before/After(できれば数字)(1行)
  • 条件:業種・規模・体制(前提の一致を作る)

営業が使うのは「流れ」より判断材料です。だから課題→決め手→効果を最短で見せる形が強いです。

9-4. メール(見込み客・既存客)に流す型

導入事例はメールと相性が良いです。理由は、読者が検討モードのときに届くからです。長文にせず、要点だけで十分です。

件名の型(例)

  • 「【導入事例】◯◯の業務を月40時間削減(◯◯社)」
  • 「◯◯社が◯◯導入で“決め手”になった比較軸」

本文の型(例)

◯◯の課題でお困りの方向けに、導入事例を公開しました。
課題:◯◯(限界)
決め手:◯◯(比較軸)
効果:◯◯(Before/After)
続きはこちら:URL

メールは「読み物」ではなく入口です。要点が揃っていれば十分に機能します。

9-5. SNSで出すなら「切り口」を変えて同じURLを3回使う

SNSは「記事を紹介」だけだと伸びにくいです。導入事例は、切り口を変えて3回出すのが基本です(URLは同じでOK)。

  • 投稿1(課題):導入前の限界(共感を取る)
  • 投稿2(決め手):比較軸と最終判断(学びになる)
  • 投稿3(効果):Before/After(インパクトで取る)

課題→決め手→効果は、そのままSNSの3分割にも使えます。

9-6. 自社サイト内SEOとしての活用(カテゴリと内部リンク)

導入事例は単体で上げるより、関連ページ群とセットで強くなります。最低限やるべきは次です。

  • 課題別カテゴリ:属人化/工数削減/セキュリティ/人手不足 など
  • 業界別タグ:製造/医療/IT/建設 など
  • 関連リンク:同じ課題の事例・ノウハウ記事へ内部リンク

読者が探すのは「自社に近い事例」です。検索だけに頼らず、サイト内で探せる設計にします。

9-7. 公開後に見るべき指標(3つだけ)

導入事例は追いすぎると運用が止まります。見る指標は次の3つで十分です。

  • 閲覧数(流入):どれだけ読まれているか
  • 読了の代理:平均滞在時間/スクロール率(取れる範囲で)
  • 成果:CTAクリック/問い合わせ/資料請求

改善は「どこが弱いか」で当て所を固定します。迷ったら次の順で潰します。

① 成果(CTA)が弱い
・まず見る:CTAクリック(0に近いか)
・打ち手:中盤に軽いCTA/末尾に重いCTAを置く(文言は「相談」より「◯◯を確認する」など)

② 流入が弱い
・まず見る:製品ページ/一覧ページからの導線有無
・打ち手:タイトルを「成果(代替)+対象+手段」に寄せる/要約ボックスに課題・決め手・効果を固定/内部リンクは3本だけ強いものに絞る

③ 読まれない(離脱)
・まず見る:平均滞在/スクロール
・打ち手:冒頭要約を3行に圧縮/見出しの粒度を揃える/太字ルールを判断材料だけに限定

最後のポイントはシンプルです。導入事例は「公開したか」ではなく、見つけられ判断材料として拾われ次の行動につながったかで成果が決まります。

迷ったら、まずは製品・サービスページへの紐づけと、冒頭の要約、中盤の軽いCTA、末尾の重いCTAを整える。これだけで、導入事例は“公開物”から営業資産に変わります。

導入事例は「意思決定の再現」を作る

導入事例は、成功談をきれいにまとめる記事ではありません。BtoBで読者が欲しいのは、「自社と似た状況の企業が、どう考え、どう決め、導入後にどう変わったか」という意思決定の再現です。

制作全体を通して、核になるのは次の3点だけです。

  • 課題:どこが詰まり、どこが限界だったか(具体)
  • 決め手:比較の軸と、最後の判断(判断材料)
  • 効果:Before/Afterの対応(可能なら数値)

この3点が揃えば、文章・デザイン・活用まで一貫して強くなります。逆にここが薄いと、どれだけ整えても「読まれない」「使われない」導入事例になります。

取材〜公開までのチェックリスト

  • 目的・ターゲット:1行で言える
  • 課題:「限界」まで具体化できている(工程/頻度/影響)
  • 決め手:「比較軸→迷い→最後の判断」で取れている
  • 効果:課題と1対1で対応している(Before/After)
  • 再現性:プロセスに「障壁+対処」が入っている
  • 公開前提:公開範囲(社名・数値・画像・画面)の条件が揃っている
  • 導線:CTAが二段構え(中盤=軽い/末尾=重い)になっている

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kageyama